前立腺がん
前立腺とは…
前立腺とは、膀胱と尿道の間に位置し、男性のみに存在する臓器で、前立腺液という精液成分の産生と射精機能を担っている臓器となります。前立腺に発生する“がん”のことを“前立腺がん”といいます。近年増加傾向にあり、2020年の統計では、男性の部位別罹患数(新たに診断された数)で前立腺がんは8万7,756人と最も多く、大腸がん、肺がん、胃がんを上回っています。45歳未満では稀ですが、50歳代以降は加齢とともに上昇するため、50歳以上の男性は、PSA検査(血液検査)などのスクリーニング検査が重要となります。
症状
初期には無症状のことがほとんどです。進行すると血尿や排尿困難などの症状が出たり、リンパ節や骨に転移して腹痛や腰痛が出たり、骨折(病的骨折)を契機にみつかることもあります。
診断
直腸診:肛門から指を入れて、直腸壁を通して触診をします。前立腺自体は体内の臓器ですが、直腸と近接して存在するため、前立腺表面の異常や大きさなどを知ることができます。
PSA(前立腺特異抗原):前立腺がんの検知および治療効果の判定に有用なマーカーで、血液検査で測定できます。ただし、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇するので、その評価には総合的な判断が必要となります。
経直腸的超音波検査:肛門から専用の超音波プローブを入れて前立腺を観察します。腹部からの超音波検査と比較して、前立腺とプローブとが近く、間に邪魔をする組織が少ないのでより鮮明な画像を得られます。不整な(ギザギザした)低エコー領域(黒い領域)を認めた場合には前立腺がんが疑われます。
前立腺MRI検査:超音波よりも高い精度で前立腺癌の診断が可能です。当院では、連携する画像診断センターに撮影を依頼し、放射線専門医の診断結果も合わせて提供しています。
前立腺針生検:直腸診、PSA、各種画像検査結果を総合的に判断し、前立腺がんの可能性が高いという判断になった場合に、診断を確定するために行います。専用の針で前立腺組織を採取し、組織学的検査(病理専門医による検査)で前立腺がんの有無を診断します。
治療
組織学的検査で前立腺がんと診断が確定したら、CT検査や骨シンチグラフィ検査でステージング(がんの進行度)を行い、ステージに合った適切な治療を選択します。